自立支援医療制度の概要
soratobunezumi合同会社で居住支援法人として相談にあたる中で、精神疾患を抱えている方も少なく有りません。
収入がなく通院が難しい、薬の処方ができず状態が悪化してしまう・・・というケースも。
そのような場合でも適切な医療を受けられるよう設けられた制度が「自立支援医療制度」です。
この制度は、通院による診療を受ける場合の医療費の自己負担額を軽減することを目的としています。
制度の目的
自立支援医療制度の目的は、心身の障害を除去し、負担を軽減することです。
医療費の負担を軽減することで、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整えることを目指します。
制度の背景
自立支援医療制度は、精神疾患を有する方々が適切な医療を受けるための支援が必要であるという背景に基づいて設立されました。
精神疾患は治療しないと悪化して治りにくくなったり、社会生活に大きな影響を与えることもあります。
まずは生活習慣や環境を整え、しっかり休養し、完治もしくは寛解を目指します。
精神科領域では、対象となる障がい特性を考慮して、回復度合いを定義しています。症状が完全に消失し精神的に安定した場合は完全寛解と呼ぶことが一般的で、身体医学の治癒に相当する。
引用元:寛解と治癒
治療期間が長く医療費もかさみ、金銭的な負担も増えてしまうことから、それらを軽減するための制度として「自立支援医療制度」が導入されました。
自立支援医療費の支給対象
自立支援医療制度の支給対象となるのは、精神疾患の治療のために医療機関に通院している方が対象です。以下の3種類があります。
精神通院医療 | 精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者 |
更生医療 | 身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上) |
育成医療 | 身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満) |
対象疾患
自立支援医療制度の対象者は、精神障害により通院による治療を続ける必要がある状態の方です。
もう少し具体的に見ていきましょう。
精神通院医療
こちらは平成18年度(旧制度は昭和40年度)に創設され、実施主体は都道府県・指定都市となります。
対象となる精神疾患は以下のとおりです。
- 病状性を含む器質性精神障害
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
- 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
- 気分障害
- てんかん
- 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
- 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
- 成人の人格及び行動の障害
- 精神遅滞
- 心理的発達の障害
- 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
- ※(1)~(5)は高額治療継続者(いわゆる「重度かつ継続」)の対象疾患
更生医療
平成18年度(旧制度は昭和29年度)に創設され、実施主体は市町村になります。
対象となる障害と標準的な治療の例は以下のとおりです。
- 視覚障害・・・白内障 → 水晶体摘出手術、網膜剥離 → 網膜剥離手術 瞳孔閉鎖 → 虹彩切除術、角膜混濁 → 角膜移植術
- 聴覚障害・・・鼓膜穿孔 → 穿孔閉鎖術、外耳性難聴 → 形成術
- 言語障害・・・外傷性又は手術後に生じる発音構語障害 → 形成術 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正
- 肢体不自由・・・関節拘縮、関節硬直 → 形成術、人工関節置換術等
- 内部障害
<心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術 後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
<腎臓>・・・ 腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
<肝臓>・・・ 肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
<小腸>・・・ 小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
<免疫>・・・ HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
育成医療
平成18年度(旧制度は昭和29年度創)に創設され、実施主体は市町村になります。
対象となる障害と標準的な治療の例は以下のとおりです。
- 視覚障害・・・白内障、先天性緑内障
- 聴覚障害・・・先天性耳奇形 → 形成術
- 言語障害・・・口蓋裂等 → 形成術
- 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって、鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者→ 歯科矯正
- 肢体不自由・・・先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
- 内部障害
<心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術 後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
<腎臓>・・・腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
<肝臓>・・・肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
<小腸>・・・小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
<免疫>・・・HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
<その他の先天性内臓障害>
先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、
停留精巣(睾丸)等 → 尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術
利用者負担
自立支援医療制度を利用する際には、利用者は一部負担をする必要があります。
自己負担の上限
一般に公的医療保険は3割負担ですが、これが1割に軽減されます。
ただし、その1割が課題にならないよう一ヶ月あたりの負担には世帯の所得に応じた上限が設けられています。
月額の自己負担上限額は、利用者の所得や症状によって変動します。
具体的な上限額は、申請時に審査が行われ、利用者の状況に応じて決定されます。
制度の適用方法
自立支援医療制度の適用方法についてご説明いたします。
申請方法と必要な書類
この制度が利用できるのは「指定自立支援医療機関」での医療に限られています。
今通院している病院や診療所が該当の機関かどうかを確認しましょう。
申請に必要な
・申請書 (自立支援医療支給認定申請書)
・医師の診断書
を用意します。
診療を受けた医師に相談して正確な書類を作成してもらいましょう。
同じ医療保険世帯の方の所得の状況等が確認できる資料が必要です。
・【市町村民税課税世帯】市町村民(住民)税の課税状況が確認できる資料(課税証明書)
・【市町村民税非課税世帯】市町村民(住民)非課税証明書/ご本人(18歳未満の場合は保護者)の収入が確認できる書類(障害年金などの振込通知書の写しなど)
※市町村の窓口で同意書を提出するなどにより、必要書類の一部の提出が省略できる場合もあります。
申請が認められると、「自立支援医療受給者証」が交付されます。
以上が自立支援医療制度の申請方法と必要な書類の概要です。
受給者証が届くまで、およそ2ヶ月程度かかると言われています。
申請を検討されている方は早めに手続きを行いましょう。
制度の利用と有効期限
自立支援医療を受けるときには、その都度「自立支援医療受給者証」と、自己負担上限額管理票を医療機関に提出します。
医療費の自己負担額の一部を公費助成するため、この医療機関は
- 病院または診療所
- 薬局
- 訪問看護事業所
となっており、各々1機関が原則となっています。
登録していない医療機関への受診も可能ですが、本制度による助成は行われませんので注意が必要です。
また、この受給者証の有効期間は1年以内となっています。
有効期限終了後も継続して自立支援医療を受ける場合には、更新が必要となります。
※更新手続きの連絡・通知はありません
おおむね有効期間終了の3ヶ月前から受付が始まり、治療方針等に変更がなければ2回に1回は医師の診断書の省略が可能です。
制度が適応されない場合の医療費は3割負担ですが、受給者証が届いた後に医療費の払い戻しの申請も可能です。
領収証などは処分しないように保管しておきましょう。
まとめ
精神疾患を有する方々は、経済的な負担が大きい状況で医療を受ける必要がありましたが、自立支援医療制度によりその負担を軽減することが可能になりました。
しかしながら、現在の自立支援医療制度にはいくつかの課題もあります。
まず一つ目は、申請や更新手続きの煩雑さです。
制度の利用には申請や更新手続きが必要であり、手続きに時間と労力がかかることがあります。
窓口が平日のみになるため、就労状況によっては来所が難しかったり、更新を失念してしまい期限が切れてしまったというケースも多いです。
また、二つ目の課題は、精神通院医療機関への限定です。
自立支援医療制度の利用には指定された精神通院医療機関を利用する必要がありますが、地域によってはそのような医療機関が限られている場合があります。
そのため、利用者が通院する際の交通費や時間の負担が増えることがあります。
申請手続きについては、精神障害者保健福祉手帳の申請と同時に自立支援医療の申請手続を行う場合には診断書が不要になる場合もありますので、詳しくはお住まいの市町村窓口へお問い合わせください。
茨城の生活困窮者自立支援
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soratobunezumi合同会社は、茨城県居住支援法人第8号です。