2023年度包括的居住支援の確立及び実現に向けた調査研究 2月(第2回)公開研究会に参加しました

2023年10月に行われた神戸での第一回公開研究会に続いて、2024年2月7日に第二回公開研究会が行われました。
東京大学本郷キャンパスとZOOMウェビナーによる同時開催です。

目次

第2回公開研究会の内容について

開催場所東京大学本郷キャンパス工学部一号館12号教室(建築学科1階)
+Zoomウェビナー
(会場参加者は先着順とし、30名を超えた場合、Zoomウェビナーでの視聴をお願いいたします)
開催日2月7日(水) 13:30~17:00
参加費無料
参加対象居住支援に関心をお持ちの方

主催は、一般社団法人全国居住支援法人協議会です。

解題 包括的居住支援の体制に向けて

住宅セーフティーネットに基づく居住支援の多様な道筋から始まり、「包括的居住支援」の考え方の重要性についてのお話でした。

居住支援というと「住宅確保要配慮者」のみが対象と言われますが、実は物件の家主も対象になりうるというのが印象的でした。
空き家問題はありますが、実は一軒家よりもアパートなどの賃貸住宅の空室も問題になっています。
「貸したいけど空いているアパート」をどう活用していくかも今後の課題となりそうです。

さらに「政策空き家」といって政策的に募集をしていない空き家や公営住宅の長期空き家など、自治体との連携を図りながら生活支援と連携し、

まだ、実際の支援では縦割りの制度の隙間を埋めることも大事ですが、属性で見るのではなく、一人ひとりの日常を想像しながら支援していきます。
各機関それぞれがならだかな横軸で繋がるよう「コーディネーター」としての要素も居住支援に求められています。

 報告①シングルペアレントの居住支援の場

「母子世帯の居住貧困」の著書、葛西リサさんによる報告では、シングルペアレントについてお話がありました。

 日本のシングルペアレント世帯は、2015 年時点で 124 万世帯あり、うち 106 万世帯が母子世帯、18 万世帯が父子世帯である(いずれも他の世帯員と同居のケースを含む。シングルペアレント世帯に属する子供数
は 189 万人(同)おり、これは 20 歳未満の未婚人口の 8.7%に相当する。

引用元:シングルペアレント世帯の 貧困とその背景

特に母子世帯では、死別の場合は住居の名義が夫のため住み続けることが難しかったり、離婚では家を出る傾向が高い。
また、出産を機にシングル物件から転居せざるを得なかったり、住まいの不安による貧困があります。

「住居がなければ就職が難しい、就職がなければ住居の確保は難しい」
「育児がなければ就職は難しい、就職がなければ育児の確保が難しい

といったループから脱却できず、不適切住宅へ依存し老後を迎えるケースも多いそうです。
高齢期における住居事情のサポートに焦点を当て、母子の受け皿として「シェアハウス」の取り組みが始まりました。

大阪にある「ぐるぐるながや」をはじめ、「グレンデール自由が丘」など、母子だけでなくシニアや地域がコミュニティを形成しながら孤立させない住生活支援の事例を発表していただきました。

 報告②まちの人々と共に創る寮、ぶんじ寮

コンサルタントからカフェ店主となった影山知明さんによる「ぶんじ寮」の取り組み発表がありました。

おとなもこどもも持ち寄ってつくる、安心と冒険が同居する「まちの寮」として、国分寺で立ち上がったこのプロジェクトは、お金に頼るのを半分にするための工夫まちの多機能共用部としての活用も行われています。

セーフティーネットは落ちる前提なのがおかしい
生きることって吊り橋を渡ることだっけ?

という問いかけが印象的でした。

また、コミュニティが主で個人が従ではなく、個人が主のコミュニティ(村型ではない)の成功事例が少ないとして、ぶんじ寮での住まい方は注目されています。

 報告③家主から見た居住支援の場となる賃貸住宅

 全国賃貸住宅新聞社 取締役で「地主と家主」の編集長でもある永井ゆかりさんによるお話でした。

居住支援法人は福祉の側面が強く、意外にも不動産の経験が少ないという法人も少なくありません。例えば地主と家主の違いといった基本的な言葉についても丁寧に解説していただきました。

地主土地の持ち主
家主賃貸住宅などの所有者
大家家主と同等で貸家の持ち主

最近では相続などで農家さんが地主になっていたり、管理部分を管理会社に委託していたり、物件に関わる人物が複雑化していることも多いそうです。

まとめ

住まいの確保は入居に限りません。

ハードとしての住宅の提供とソフト面での一人ひとりに寄り添う包括的居住支援が求められています。
一時生活支援事業の名称も「居住支援事業」に改める方向で検討も進められているそうです。

住居と居住の差分を縮めるため、その手段も各自治体での事例を積極的に共有し、全体的にウェルフェアからウェルビーイング社会へ転換していく意識付けが大事になってきています。

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