居住支援法人として業務に当たっていると必ずと言っていいほど耳にする「生活保護」についてまとめてみました。
生活保護とは何か
日本全国あらゆる年齢や性別の人々に対して、確実な生活保障を提供するための制度が生活保護です。
具体的には、生活に必要な最低限の生活資金や生活上の各種の援助を提供や、社会復帰するための支援などを行います。
生活保護に似た制度で「生活困窮者自立支援制度」というものがありますが、こちらは生活保護の受給にいたらないように自立を支援する制度です。
こちらは基本的には現金給付はなく、自立に向けた相談支援が主になります。
生活保護の定義と目的
生活保護とは、法律(生活保護法)に基づいて国や自治体が困窮した人々の生活を保護し、その人々が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるように支援を行う制度です。
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
第十一条 保護の種類は、次のとおりとする。
一 生活扶助
二 教育扶助
三 住宅扶助
四 医療扶助
五 介護扶助
六 出産扶助
七 生業扶助
八 葬祭扶助
2 前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる。
引用元:生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)
生活資金、医療、教育、住居など、生活全般にわたる支援が行われます。
その目的は、すべての国民が安定した生活を営む権利を実現することです。
また、生活保護は一時的な救済だけでなく、受給者が自ら生計を立てることができるよう、積極的な支援も行います。
生活保護制度の成り立ち
生活保護制度は、戦後、生活に困窮する人々を国や自治体が保護する必要性から生まれました。
生活保護制度とは、国が、生活に困窮するすべての国民に対してその困窮の程度に応じ、必要な保護を行います。その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長するために作られました。
1946年に制定された「生活保護法」によって始まり、1970年代には高度経済成長による貧富の格差や老後の生活保障、身体障害者の生活保護などを背景に拡大されました。
その後も様々な社会背景の変化を受けて度々改正されています。
現在でも、新型コロナウイルスや先進的なIT技術、高齢化社会など時代とともに形成される新たな困窮事情に対応するため、逐次改善が求められています。
年次推移を見てみると、生活保護受給者数は増加傾向にあります。
2008年のリーマンショックでは、日本を含めた世界中の証券会社や投資家、銀行に被害が及びました。
それにより日本での失業率が5.5%上昇、派遣切りやパート非正規雇用切りも行われ、住宅ローンの貸付の返済不能者が続出。
高齢化による高齢者世帯の増加に加え、稼働年齢層の保護世帯の割合も増えました。
生活保護の対象者
生活保護の対象者は、ひとえに生活に困窮し日常生活を送るための最低限の生活が困難で、自立して生計を立てること難しい人を指します。
貧困、病気、障害、借金など様々な理由で自分の力だけでの生活が難しく、助けが必要な人々が該当します。
しかし、いきなり申請してすぐに支給されるわけではありません。
市区町村の生活保護担当窓口で必要書類を揃え、申請すると、ケースワーカーによる面接や訪問調査が行われ、その結果に基づいて生活困窮状態が認定されれば、初めて生活保護の支給が開始されます。
生活保護の申請方法
生活保護を申請するには、まずは現状をしっかりと理解し、自分が保護を受ける資格があるのかどうかを判断しましょう。
能力や資産など活用できるものはないか、まずはせいいっぱい努力しましょう。というのが前提にあります。
・働ける人は能力に応じて働き、保有する現金や資産や預貯金は生活費に当ててください
・生命保険に加入している場合は原則として解約し、返戻金を生活費に当ててください
・親・子ども・兄弟姉妹など、民法上の扶養義務のある方から援助を受けられる場合は、優先して援助を受けてください
・社会保障制度(傷病手当や雇用保険・労災保険・国民年金・厚生年金・児童手当・児童扶養手当など)を受けられる場合は全て受けてください
上記のようなことをしても生活が困窮しているとみなされた場合、生活保護が申請可能となります。
また、この時に現住所がない場合は生活保護の申請ができない事が多いので、まずは居住地を確保しておきましょう。
生活保護は、困窮した生活状況を保護し、生活の安定を図るもの。
努力しても生活ができないときに、国が一定の基準に従って最低生活に不足する分のお金が支給されるのです。
引用元:厚生労働省「最低生活費」
また、原則として一緒に生活している家族を一つの世帯として、世帯ごとに適応となります。
その世帯が、国が決めている基準(最低生活費)に比べて不足する場合に、その不足分が保護費として支給されます。
「努力しても生活ができない」という要件から外れてしまうと、生活保護が打ち切りまたは停止になる場合もあります。
要件をしっかり把握しておきましょう。
必要書類と申請手続き
生活保護を申請するためには、以下のステップが必要です。
最初に自治体の生活保護課や社会福祉課、あるいは民生委員を通して相談します。
保護申請書類に必要事項を記入し、福祉事務所で手続きを行います。
福祉事務所の地区担当員が自宅へ伺い、調査をします。
調査に基づき、保護が必要かどうか決定します。
保護開始決定通知書、あるいは保護却下決定通知書が届きます。
申請書では、自己の生活状況や家族の状況、財産状況などを記入します。
次に、必要書類があり、これには住民票、所得証明書、預貯金通帳の写し、年金など所得源の一覧等が含まれます。
戸籍謄本が必要な場合もあります。
一度完全に書類が揃ったら、それらを添えて申請します。
面接・調査の流れ
申請書と必要書類を提出した後、専門の職員が自宅を訪れる基礎調査が行われます。
この際に職員は家族構成、生活状況、財産状況、その他必要情報を詳細に調査します。
その後、面接が行われ、申請者が生活保護者として適切かどうかを判断します。
面接中に該当者の生活状況や意志等を十分に聴取し、適切な援助が行われることを確認します。
調査結果や面接内容は、申請者の保護の承認やその内容に大きく影響します。
この段階で任意的な虚偽の情報を提供すると、後の申請却下等に繋がる場合があります。
全ての調査をしっかりと受け、適切な情報を提供することが重要です。
申請審査までの期間
保護が受けられるかどうか、申請を提出してから審査結果が出るまでの期間は申請した日から14日以内、遅くとも30日以内に通知されます。
しかし、30日を超えた場合には却下とみなすことができます。
緊急性が認められる場合などは、早めの対応がされることもあるようです。
審査に時間がかかる場合でも、結果が出るまでに必要なサポートが得られることがありますので、適時相談していきましょう。
生活保護の給付内容
生活保護を受けると、以下の費用等は免除や減額、資格を失うことになります。
免除・減額 | 資格を失うもの |
---|---|
国民健康保険の保険料 | 国民健康保険証 |
住民税 | 後期高齢者医療被保険者証 |
医療福祉費受給者証(マル福) |
その他、免除や減額されるもので申請が必要なものもあります。
- NHKの受信料
- 固定資産税
- 高校の入学金等
- 保育所の保育料
生活保護の給付内容とは、国が生活必需品の確保や生活を安定させるために、必要な援助を提供する制度です。
各扶助の内容については8種類あります。
扶助の種類 | 主な費用 |
---|---|
生活扶助 | 生日常生活に必要な費用(食費・光熱費・被服費) |
住宅扶助 | アパート等の家賃 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 |
介護扶助 | 介護サービスの費用 |
出産扶助 | 出産費用 |
生業扶助 | 就労に必要な技能の修得等にかかる費用 |
葬祭扶助 | 葬祭費用 |
これらの給付の目的は、生活困窮者が日常生活を営む上で必要最低限の支援を行い、自立した生活を送れるように支えることです。
各項目を少し詳しく解説していきます。
生活扶助を中心に
生活扶助とは、食べ物や着るもの、電気・ガス・水道など日常生活のための必需品を確保する給付金です。
ここから歩き始めることになるため、発生する給付金の割合も最も高いです。
生活扶助には家庭の大きさや地域の物価などにより援助額が変動しますが、援助金額の上限は定められ、その上限内で生活を営むことが求められます。
それぞれの家庭の必要な物品を整え、生活するために必要な範囲での援助を行います。
そのため、生活保護の援助内容はその人や家庭の大小、生活水準によって異なり、一概には言えません。
住宅扶助、教育扶助
住宅扶助とは、生活保護を受ける家庭が適正な住まいを確保するための援助です。
家賃、地代、賃貸契約の更新や修繕の費用なども支援対象になります。
教育扶助については、就学に必要な学費や教材費を援助します。
例えば、小学校・中学校の義務教育にかかる学用品・教材費・給食費・学級費などが含まれます。
その他にも交通費の給付や進学に関する費用も、一部援助の対象になります。
これらは子どもたちの学びを安心して進めることができるよう、援助する項目なのです。
医療・介護扶助について
次に、医療・介護扶助についてです。
生活保護では、必要な医療を受けるための経済的援助を行います。
保険診療の自己負担割合や、保険適用外の医薬品や治療なども、一定の基準に基づき全額または一部が給付されます。
また、介護が必要な方についても、介護サービスの利用費用や補助具の購入費用などを援助します。
医療や介護に必要な費用が生活保護から支給されることで、健康と安心な生活の維持が可能となるのです。
医療扶助の受給者の割合は、生活保護受給者の約半分近くと言われています。
病気や怪我、障害などの理由から収入が十分に得られなくなってしまい、生活保護の受給に至ったというケースが多いためです。
また、これに似た制度で「自立支援医療制度」というものがあります。
出産扶助
出産制度はお産をするためにかかる費用を補助金として受け取ることができます。
生活保護受給者は出産一時金は支給されませんので、これから出産を控えている、あるいは出産した方は申請して手続きを行います。
生業扶助制度は、技能や技術を身につけるためにかかる費用や高等学校に就学するための費用が対象です。これは就労することを目的として支給されます。
最後に葬祭扶助ですが、これはお葬式や火葬・埋葬などの費用が支給されます。
一時扶助について
生活保護では、臨時的な支出に応じて一時扶助があります。
福祉事務所などで事前に相談・申請が必要であり、一定の条件や上限額もあるので必要なときには窓口へ相談してみてください。
毎月支給される保護費には、最低生活費として必要なものは全て含まれています。しかし、入学・転居・通院など、保護費のやり繰りではこれらの支出をまかないきれない場合があります。このようなとき、一時的に一定の支給ができます。
引用元:生活保護のしおり
- 被服費(布団・おむつ等)
- 入学準備金、(小中学校の入学準備に必要な費用)
- 引っ越しの際の敷金等
- 治療材料の費用 ・・・etc
生活保護のまとめ
以上、生活保護の基本から申請までについてでした。
生活保護を必要とする可能性は、どなたにもあります。
国民の権利である「生活保護」は生活を守るためのセーフティーネットなのです。
居住支援法人でも、住まいの相談に伴って生活に関する相談も多くいただきます。
お困りのときにはご相談ください。
茨城の生活困窮者自立支援
住むところの相談や生活の安定に向けた支援を行っています。
必要なヒト・モノ・コトがあれば、人生のバックヤードにご相談下さい。
soratobunezumi合同会社は、茨城県居住支援法人第8号です。