こんな相談、受けたことはありませんか?
自立援助ホームで退所に向けた準備をしていると、こんな状況に直面することがあります。
- 親が頼れないため、賃貸の保証人になってもらえない
- 高校卒業後の進路がまだ決まっておらず、無職の状態で物件を探さなければならない
- 以前借りていた部屋の家賃を滞納してしまい、次の審査が通らない
- 保証会社の審査に何度落ちても、次の手が見えない
こういった状況の相談を受けたとき、「難しいかもしれない」と感じてしまうこともあるかもしれません。
でも、通常の賃貸審査とは別のルートが存在します。
それが「身元保証人確保対策事業」です。
まずはこの制度を知っておいてください。
知っているだけで、支援の選択肢が一つ増えます。
身元保証人確保対策事業とは
身元保証人確保対策事業とは、社会福祉法人全国社会福祉協議会(以下、全社協)が運営する制度で、児童養護施設や自立援助ホームなどを退所した若者が就職・進学・賃貸の場面で保証人を必要とするときに、施設長等が保証人になれる仕組みです。
保証料は国と措置委託元の都道府県が負担するため、本人にも施設長にも保証料の負担はありません。
対象となる施設
以下の14種類の施設・事業が対象です。
- 児童養護施設
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 母子生活支援施設
- 女性自立支援施設
- 里親
- ファミリーホーム
- 児童自立生活援助事業所Ⅰ型(自立援助ホーム)
- 児童相談所一時保護所
- 女性相談支援センター一時保護所
- 就学者自立生活援助事業を行っていた団体
- 社会的養護自立支援事業を行っていた団体
- 児童自立生活援助事業所Ⅱ型
- 児童自立生活援助事業所Ⅲ型
対象となる人
対象施設に入所中または退所後5年以内の方で、以下のいずれかに該当し、親族等に適当な保証人がいない方です。
- 父母等が死亡・行方不明・逮捕拘留中
- 父母等に心身の障害がある
- 父母等が経済的に困窮している
- 虐待やDV等の理由により父母・配偶者等が保証人になることが適当でない、または協力が得られないト
賃貸の連帯保証として使う場合
賃貸住宅に関する「賃貸借契約」で、連帯保証としてこの制度を使うことができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保証限度額 | 120万円 |
| 保証期間 | 最長3年間(条件により1年延長可) |
| 保証料負担 | 本人・施設長ともに負担なし |
| 対象となる債務 | 家賃・共益費の滞納、原状回復費用、不法居住による賠償金など |
最近の傾向では、家賃保証会社を利用する事が多いですが、入居者の属性によっては「連帯保証人をつけてください」と言われることもあります。

実際に入居できたケース
あるケースでは、自立援助ホームを退所後に就労・賃貸契約までたどり着いたものの、体調を崩して働けなくなり家賃を滞納してしまいました。
その後、体調が回復して新たな物件を探し始めましたが、状況は無職・滞納歴あり。
通常の賃貸保証会社の審査は通らない状況でした。
そこでこの制度を活用し、施設長の身元保証で申し込んだところ、入居に至りました。
「頑張ったけれど、一度崩れてしまった」という状況の方にも、この制度が別のルートになり得た実例です。

申し込みの流れ
申し込みは措置委託元の都道府県等を通じて行います。
以下のステップで進めてください。
加入申し込み手続き
まず措置委託元の都道府県等の身元保証人確保対策事業担当部署に相談します。
施設長が保証人になる意思があることを確認したうえで進めましょう。
施設長(保証人)が加入申込書に必要事項を記入し、添付書類(賃貸借契約書の写しなど)とともに都道府県の担当部署へ送付します。
都道府県が内容を確認後、全社協へ書類を転送します。
全社協が審査を行い、承認後に施設長あてに「保証書」が送付されます。毎月25日までに書類が届いた場合、翌月1日から保証開始となります。
支援者が知っておきたい現実的なポイント
施設長の協力が必要です
この制度を使うには、施設長等が保証人になることへの同意と手続きへの協力が必要です。
手続きが発生するため、協力が得られないケースもあります。
「この制度があるから必ず使える」ではなく、「方法の一つとして知っておき、可能性を確認する」という姿勢で活用してください。
使えない場合もあります
以下の場合は対象外となりますので、注意が必要です。
- グループホーム(共同生活援助・障害福祉サービス)への入居
- 就労継続支援B型の利用
- 鳥取県在住の方(独自事業のため本事業の対象外)
- 退所後5年を超えている方
保証人が変わった場合は手続きを
施設長の退職・異動などで保証人が変わった場合は、速やかに加入内容変更の手続きが必要です。
手続きが漏れると、事故が発生した際に保証が受けられない場合があります。
よくある質問
- 退所から3年が経っています。まだ使えますか?
-
退所後5年以内であれば対象です。
ただし、親族等に適当な保証人がいないことなど、他の要件も満たす必要があります
- 担当職員が保証人になることはできますか?
-
原則として保証人になれるのは施設長等に限られています。
ただし、措置委託元の都道府県等が適当と認めた者であれば施設長以外が保証人になれる場合もあります。
まず都道府県の担当窓口に相談してください。 - 本人が無職でも申し込めますか?
-
はい、本人の就労状況は申し込みの要件ではありません。
実際に無職の状態で申し込み、入居に至ったケースもあります。
- 滞納歴がある場合でも使えますか?
-
この制度は通常の保証会社審査とは別のルートです。
滞納歴があっても申し込むことは可能です。ただし、最終的な判断は全社協の審査によります。
- 保証料はいくらかかりますか?
-
施設長(保証人)本人への保証料負担はありません。
保証料は国と措置委託元の都道府県が負担します。
- 申し込みから保証開始まで、どのくらいかかりますか?
-
措置委託元の都道府県等から全社協に毎月25日までに書類が届いた場合、翌月1日から保証開始となります。
余裕を持って手続きを進めることをおすすめします。
- グループホームへの入居には使えないのですか?
-
障害福祉サービスの共同生活援助(グループホーム)や就労継続支援B型の利用は対象外です。
一般の賃貸住宅への入居が対象となります。
- 保証期間が終わったらどうなりますか?
-
保証期間は1年ごとの更新で、最長3年間です。
条件によって1年延長できる場合もあります。更新の案内は毎年2月頃に全社協から送付されますので、見落とさないようにしてください。
- 施設長が退職した場合、保証はどうなりますか?
-
施設長が変わった場合は、速やかに加入内容変更の届出が必要です。
手続きを怠ると、事故発生時に保証が受けられない場合があります。
- 鳥取県に住んでいる方は使えませんか?
-
鳥取県は独自の事業を実施しているため、この全社協の事業の対象外となっています。
鳥取県の担当窓口に別途ご相談ください。
まとめ:制度を知って、支援の選択肢を増やしましょう
滞納歴がある、無職である、親が頼れない。
そういった状況が重なると、支援者も「難しいかもしれない」と感じてしまうことがあります。
でも、通常の賃貸審査とは別のルートが存在することを知っているだけで、提案できる選択肢が一つ増えます。
施設長が協力してくれるかどうか、都道府県の担当窓口で手続きが進むかどうか、まず確認してみてください。
