知っておきたい住宅セーフティネット法

目次

住宅セーフティネット法とは

住宅セーフティネット法の定義

住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者に対して賃貸住宅の供給を促進するための法律です。
正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といいます。

第一条 この法律は、住生活基本法(平成十八年法律第六十一号)の基本理念にのっとり、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関し、国土交通大臣による基本方針の策定、都道府県及び市町村による賃貸住宅供給促進計画の作成、住宅確保要配慮者の円滑な入居を促進するための賃貸住宅の登録制度等について定めることにより、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用元:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律

同法は2017年(平成29年)4月に改正されています。(4月26日公布)

この法律の下で、賃貸住宅の賃貸人はセーフティネット登録住宅として自らの住宅を都道府県や政令市、中核市に登録することができます。
登録された住宅は、住宅確保要配慮者に広く提供されることになります。

住宅セーフティネット法の制度は、賃貸住宅市場においてより良い住環境の確保と、住宅確保要配慮者の居住の安定を目指します。

法律の目的とは

住宅セーフティネット法の主な目的は、住宅確保要配慮者の居住安定を支援することにあります。

これには、低所得者、被災者、高齢者、障がい者、子育て世帯など多様な背景を持つ人々が含まれます。
法律では、これらの要配慮者が安心して居住できる賃貸住宅の供給を促進するための枠組みを設けることで、社会的弱者の住環境を改善し、より良い居住特性と生活の質の向上を図っています。

また、改正法案により、終身建物賃貸借の利用促進や居住支援法人による残置物処理の推進など、居住環境の整備に対する取り組みも強化されています。

この法律は、住宅施策と福祉施策が連携し、地域における居住支援体制の強化を目指しています。

住宅セーフティネット制度の内容

登録の申請は無料で行うことができます。

セーフティネット住宅情報提供システム

必要な書類は以下のとおりです。

書類
登録申請書登録システムにて入力
賃貸住宅の規模及び設備の概要を表示した間取図
誓約書登録システムにて入力
住宅の耐震性に関する書類(昭和56年5月30日以前に着工したもの)耐震改修促進法に基づく建築士が行った耐震診断の結果についての報告書
品確法第6条第3項による建設住宅性能評価書
住宅瑕疵担保履行法第19条第2項の保険契約が締結されていることを証する保険契約書 など
着工年月日に関する書類
(昭和56年6月1日以降に着工した住宅で、以下の場合のみ)
・1~3階建てで昭和57年5月以前に竣工したもの
・4~9階建てで昭和58年5月以前に竣工したもの
・10~20階建てで昭和60年5月以前に竣工したもの
・21階建て以上のもの
・申請書に着工年月のみが記載されている場合
着工年月の詳細がわかる検査済証 など
各住戸の面積(共同居住型賃貸住宅の場合は、共同利用設備等の床面積も含む。)を明示した床面積表
その他市長が必要と認める書類

登録住宅の改修への支援

住宅セーフティネット法に基づく、住宅セーフティネット制度では、賃貸住宅の賃貸人がセーフティネット登録住宅として改修の支援を受けることができます。

住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業といい、住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業 交付事務局が問い合わせ先になります。

補助対象工事

バリアフリー改修工事、耐震改修工事、共同居住用住居に用途変更するための改修工事、間取り変更工事、子育て世帯対応改修工事、防火・消火対策工事、交流スペースを設置する工事、省エネ改修工事、安否確認のための設備の改修工事、 防音・遮音工事、居住のために最低限必要な改修工事、調査において居住のために最低限必要と認められた工事、入居対象者の居住の安定確保を図るため住宅確保要配慮者居住支援協議会等が必要と認める改修工事、調査設計計画(インスペクションを含む)

この支援は、住宅確保要配慮者が安全かつ安心して生活できるように、賃貸住宅の環境を向上させることを目的としています。
改修の要件として、耐震性の確保や、生活に必要な最低限の住戸面積の拡大などが挙げられます。

これらの改修を行うことで、賃貸住宅は登録基準を満たし、セーフティネット登録住宅として、住宅確保要配慮者に提供されます。

住宅の登録基準は以下のとおりです。

  • 耐震性を有すること
  • 住戸の床面積が原則25㎡以上であること
  • 家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないこと

※共同居住型住宅(シェアハウス)等については別途基準が定められています。

入居者の負担を軽減する支援

住宅セーフティネット法では、入居者の経済的な負担を軽減するための支援も提供されます。

この支援は、低所得者や高齢者、障がい者、被災者、子育て世帯などの住宅確保要配慮者が、賃貸住宅において安心して生活できることを目的としています。

支援内容としては、家賃の一部を補助する制度や、入居時に必要な保証金や礼金などの初期費用の支援が含まれます。また、居住支援法人による残置物の処理や家賃債務保証業者の認定制度の創設など、入居者の生活を支える多岐にわたる支援が実施されています。

家賃・家賃債務保証料等低廉化補助の概要

対象となる「住宅確保要配慮者」の定義

住宅セーフティネット法に基づいて、社会的なサポートが必要とされる対象者は、「住宅確保要配慮者」として位置づけられています。

住宅確保要配慮者は、改正法において、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯と定められています。また、省令において外国人等が定められているほか、地方公共団体が賃貸住宅供給促進計画を定めることにより、住宅確保要配慮者を追加することができます(例えば、新婚世帯など)。

引用元:住宅セーフティネット制度について

住宅セーフティネット法の枠組みの下では、これらの住宅確保要配慮者向けに、特定の基準を満たした賃貸住宅が「セーフティネット登録住宅」として供給されます。

住宅セーフティネット法の改正とその影響

住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者に対する支援を強化するために改正が行われてきました。
2024年3月8日に閣議決定し、国会に提出された改正法案には、住宅提供の質と量の両面から、より効果的な支援を行うための新たな施策が盛り込まれています。

具体的には、終身建物賃貸借の利用促進が挙げられます。
この制度を利用することによって、入居者はより安定した住居を確保することが可能となり、賃貸人にとっても長期間にわたる安定した収益が見込めるため、双方にとってメリットが期待できます。

また、居住支援法人による残置物処理の推進家賃債務保証業者の認定制度の創設が行われたことで、入居者と賃貸人のリスクを軽減し、賃貸市場の健全化が図られています。
さらに、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化が目指されており、住宅確保要配慮者がより生活しやすい環境の整備が進められています。

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これらの改正により、住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者にとってより実用的で柔軟な支援を提供する法律へと進化を遂げています。
これにより、住宅確保要配慮者がより安心して居住できる社会の実現へと繋がることが期待されます。

住宅セーフティネット制度の現状と課題

住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者に安定した生活基盤を提供するため、賃貸住宅市場におけるセーフティネットの確立を目的に制定されました。
この制度により、賃貸人は自らの所有する住宅をセーフティネット登録住宅として認定させることができ、住宅確保要配慮者への広範な住宅供給が進められています。

しかし、この制度の現状として多くの課題も存在します。


第一に、登録住宅の改修に関する支援や経済的負担の軽減措置が充分に行き渡っていない状況があります。

これは、賃貸人が改修支援の情報を得にくい、あるいは支援の適用を受けるための手続きが複雑であるため、登録後の改修率が期待したほど進まず、結果として賃貸住宅の質が十分に向上していないという問題があります。

また、住宅確保要配慮者の定義は広範にわたるものの、その中でも特に支援を必要としている個人や家庭が十分に制度を利用できていないことが問題視されています。

低所得者や被災者、高齢者などの中には、情報へのアクセスや理解が難しいために、この制度の存在自体を知らない、または具体的な利用方法が分からず支援を受けられないケースが散見されます。


さらに、住宅セーフティネット法の改正により制度は一層充実していますが、新たに盛り込まれた施策や取り組みが実際に地域で活用されるまでには、行政や関係機関との連携を強化し、実施に向けた体制を整える必要があります。

終身建物賃貸借の利用促進や居住支援法人によるサポートなど、多様な施策が導入されているものの、実際にこれらが住宅確保要配慮者への実質的な支援に繋がるためには、さらなる啓発活動やシステムの改善が求められる状況です。

まとめ

結論として、住宅セーフティネット法は多くの住宅確保要配慮者への支援を目指しているものの、その現状にはいくつかの課題が存在します。

改修支援の情報提供の向上、支援の対象となる人々への情報の普及、そして改正法案による新たな施策の地域での実施に向けた取り組みの強化が、今後の課題として挙げられます。

住宅セーフティネット法は多様な需要に応えるための重要な制度です。
より多くの人々がこの制度を理解し、必要なサポートを受けられるようになるよう活動を続けていきたいと思います。

茨城の生活困窮者自立支援

住むところの相談や生活の安定に向けた支援を行っています。
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soratobunezumi合同会社は、茨城県居住支援法人第8号です。

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