「シェルターの期限が来る…その後はどうなるの?」
一時生活支援事業でシェルター(緊急的な宿泊施設)に入れた。
でも、3ヶ月、長くても6ヶ月で出なければならない。
その後は?
- 次の住まいが見つかるか不安
- 一人暮らし、できるかな
- また路上に戻ってしまうかも
- 誰も助けてくれないんじゃないか
シェルター退所後に待っている「崖」。
この記事では、シェルター退所後の支援について、制度の変遷と現状、そして「今、どこに相談すればいいのか」を解説します。
シェルター退所後の「崖」問題
まず、シェルター退所後に何が起きるのか、整理しましょう。
一時生活支援事業(シェルター)とは
一時生活支援事業は、住む場所を失った人に、緊急的な宿泊場所を提供する制度。
- 内容:
-
- 宿泊場所の提供
- 食事の提供
- 生活必需品の支給
- 就労支援など
- 期間
-
3ヶ月(最長6ヶ月まで延長可能)
- 対象
-
- 住居がない
- ホームレス状態
- ネットカフェ生活
- 緊急的に住む場所が必要


シェルター退所後の課題
一時生活支援事業には、期限があります。
3ヶ月、長くても6ヶ月。
期限が来たら、シェルターを出なければなりません。
でも、その後はどうなるのでしょうか。
- 理想
-
- シェルターに入所
- 仕事を見つける
- 民間賃貸に入居
- 自立
- 現実
-
- シェルターに入所
- 仕事は見つからない、または不安定
- 物件探しが難航(保証人、初期費用、審査
- 退所期限が来る行き場がない
- また路上に戻る
厚生労働省のデータでは、シェルター等からの退所者のうち、67.4%が6ヶ月〜1年の支援期間を必要としているというデータがあります。

つまり、シェルター(3〜6ヶ月)だけでは足りない。
退所後も、継続的な支援が必要なのです。
退所後の「崖」
シェルターを出た後、いきなり一人暮らし。
- 物件探しから契約まで、一人で
- 入居後の生活も、一人で
- 困ったときに相談する人がいない
- 孤立する
- 生活が破綻する
- また路上に戻る
これが、シェルター退所後の「崖」です。
この「崖」を埋めるための制度が、必要なのです。
地域居住支援事業について
実は、この「崖」を埋めるための制度が、すでに存在しています。
それが、地域居住支援事業です。
地域居住支援事業は、2019年4月に施行された制度です。
生活困窮者自立支援法に基づき、一時生活支援事業を拡充し、シェルター退所後の支援を強化することを目的としています。
- 対象者
-
- 一時生活支援事業の終了者(シェルター退所者)
- 現在の住居を失うおそれのある生活困窮者
- 地域社会から孤立した状態にある人
- 自立相談支援機関が必要と認めた人
- 事業内容
-
①入居支援
- アパート等へ転居するための支援
- 物件探し、契約サポート
②居住継続支援
- 訪問による見守り
- 生活相談
- 居住を安定して継続するための支援
③域づくり
- 地域社会との交流
- 互助の関係づくり
- 関係機関とのネットワーク構築
- 利用期間
-
1年以内
- 利用料
-
無料
つまり、シェルター退所後、民間賃貸への入居を支援し、入居後1年間、見守りや生活相談を提供する。
まさに「崖」を埋める制度です。
でも、実態が見えない
しかし、この制度。
2019年から施行されているのに、実態がよくわかりません。
Web検索しても
- 情報が少ない
- 事例が見つからない
- 実施している自治体がわからない
唯一見つかった事例:京都市
京都市では、このような形で実施されているようです。
| サービス名称 | 事業内容 |
|---|---|
| 移動支援 (ガイドヘルプ) | 社会参加や余暇活動等の外出の際にガイドヘルパーが移動を支援します。ひとり親世帯等、一定要件を満たす児童は、通学時の送迎にも利用できます。 |
| 地域活動支援センター (デイサービス) | 施設への通所により、創作的活動・機能訓練・社会適応訓練等を行います。 |
| 日中一時支援 (日帰り短期入所) | 日中、家で介護する方がおられない場合、日帰りで施設へ入所できます。 |
| 訪問入浴サービス | 自宅や施設の浴槽での入浴が難しい重度の障害のある方に、浴槽を登載した入浴車で訪問し、入浴サービスを行います。 |
| 日常生活用具 | 日常生活をしやすくするための用具(電気式たん吸引器・ストーマ装具等)を給付します。 |
こちらは、具体的な支援内容がWebで公開されている、貴重な事例です。
地域居住支援事業の実施状況と結果
なぜ、地域居住支援事業は実態が見えないのでしょうか。
推測される理由を挙げてみます。
- 1.実施自治体が少ない
-
- 予算・人員の問題
- 制度が広がっていない
- 2.実施しているけど公開していない
-
- Web等で情報発信していない
- 窓口に行かないとわからない
- 3.独自の名称で実施している
-
- 「地域居住支援事業」という名称を使っていない可能性
- 検索しても見つからない
どれが正解かは、わかりません。
ただ、確実に言えるのは
「地域居住支援事業」という制度があっても、当事者や支援者に情報が届いていない。
地域居住支援事業は、自治体が中心となって実施する制度です。
でも、自治体だけでシェルター退所者の入居後支援を行うのは、現実的に難しい。
- ① 予算・人員不足
-
- 自治体職員は他の業務も抱えている
- 訪問見守りを継続的に行う人員が確保できない
- 予算が限られている
- ② 民間賃貸との繋がりが弱い
-
- 自治体職員は不動産業界との繋がりが薄い
- 物件探しがスムーズにいかない
- 大家さんの不安を解消できない
- ③ 継続的な見守り体制の構築が困難
-
- 月1回の訪問を1年間継続するのは大変
- 緊急時の対応体制
- 夜間・休日の対応
- ④ ノウハウの不足
-
- 生活困窮者の支援ノウハウ
- 住宅支援の専門性
- 関係機関との連携
つまり、制度は作ったけど、現場で動かすのは難しかった。
更に、実施していても、情報公開が進まない理由もあります。
- ① 積極的に広報していない
-
- 予算・人員が限られているので、対応できる件数に限りがある
- 広報して相談が増えても、対応しきれない
- だから、あえて広報しない
- ② Webサイトでの情報発信が弱い
-
- 自治体のWebサイトは更新が遅い
- 新しい制度の情報が掲載されにくい
- 担当部署が変わると情報が消える
- ③ 窓口に来た人だけに案内
-
- Web公開はしない
- 窓口に来た人に口頭で案内
- だから、検索しても見つからない
結果として、当事者に情報が届きません。
- シェルターにいる人は、退所後の支援があることを知らない
- 支援者も知らない
- だから使われない
- 実績が上がらない
- さらに情報が出なくなる
悪循環です。
2025年の変化:居住支援法人の強化
ここまで、地域居住支援事業の課題を見てきました。
でも、2025年、大きな変化がありました。
居住支援法人による入居後支援の強化です。
居住サポート住宅制度(2025年10月施行)
2025年10月1日から、「居住サポート住宅制度」が施行されました。
これは、住宅セーフティネット法の改正により、入居後の見守り・支援を制度として義務化するものです。
- ① 入居後の見守り・支援を義務化
-
- 安否確認
- 訪問による見守り
- 福祉サービスへのつなぎ
- ② 居住支援法人が中心
-
- 自治体ではなく、居住支援法人が支援を担う
- 都道府県から指定を受けた法人
- 不動産との繋がり、支援のノウハウがある
- ③ 国の補助金で財源確保
-
- 見守り・支援活動への補助金
- 継続的な活動が可能に
- ④ 大家さんも安心
-
- 入居後の見守りがあるから安心
- トラブルの早期発見
- 孤独死リスクの軽減

地域居住支援事業との違い
| 項目 | 地域居住支援事業 | 居住サポート住宅制度 |
|---|---|---|
| 開始時期 | 2019年4月 | 2025年10月 |
| 法的根拠 | 生活困窮者自立支援法 | 住宅セーフティネット法 |
| 主な担い手 | 自治体 | 居住支援法人 |
| 支援内容 | 入居支援、見守り、地域づくり | 安否確認、見守り、福祉連携 |
| 財源 | 自治体予算 | 国の補助金 |
| 実態 | 不明確 | 制度として整備 |
| 情報公開 | 少ない | 明確化 |
つまり、地域居住支援事業(自治体主導)では、実態として機能しにくかった。
だから、2025年10月から、居住支援法人を中心とした仕組みに強化されたのではないか。
これが、制度の変遷の背景にあると考えられます。
今後の相談について
では、シェルター退所後の支援を受けたい場合、どうすればいいのでしょうか。
シェルターに入っている人は、すでに自立相談支援窓口と繋がっているはずです。
まず、担当の支援員に相談してください。
聞くべきこと:
- 「退所後の支援はありますか?」
- 「地域居住支援事業はありますか?」
- 「居住支援法人を紹介してもらえますか?」
もし、お住まいの地域で地域居住支援事業が実施されていれば、それを利用できます。
- 入居支援
- 入居後1年間の見守り
- 無料
地域居住支援事業が実施されていない場合、居住支援法人を紹介してもらいましょう。
居住支援法人なら
- 入居支援
- 入居後の見守り(2025年10月以降、制度として強化)
- 大家さんとの橋渡し
居住支援法人の活用
居住支援法人は、住宅確保要配慮者(住まいを見つけにくい人)を支援する法人です。
都道府県から指定を受けており、以下のような支援を行います。
- ① 入居支援
-
- 物件探し 大家さんとの交渉
- 契約手続きのサポート
- 保証人問題の解決(家賃債務保証の認定を受けている法人のみ)
- ② 入居後の見守り
-
- 月1回以上の連絡・訪問
- 生活相談
- トラブル時の対応
- 福祉サービスとの連携
- ③ 2025年10月以降、制度として強化
-
- 居住サポート住宅制度
- 見守り・支援が義務化
- 国の補助金で継続的な活動

他の選択肢も組み合わせる
さらに他の制度も活用できます。
- ① 住居確保給付金
-
- 家賃を3〜9ヶ月支給
- 仕事を探している人が対象
- 生活困窮者自立支援制度
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-
- 収入がない、働けない場合
- 生活費・家賃が支給される
- 医療費無料
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-
- 就労支援
- 家計相談
- 自立に向けたサポート
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これらを組み合わせて、安定した生活を目指します。
よくある質問
- 地域居住支援事業はどこで実施されていますか?
-
お住まいの自治体に確認してください。
Web検索しても情報が少なく、実施自治体が明確ではありません。まずは、お住まいの市区町村の自立相談支援窓口に「地域居住支援事業はありますか?」と聞いてみてください。
- 地域居住支援事業と居住サポート住宅制度、どっちを使えばいい?
-
両方使える可能性があります。まずは窓口に相談を。
- 地域居住支援事業:自治体が実施(実施自治体は限定的)
- 居住サポート住宅制度:居住支援法人が実施(2025年10月以降)
- 費用はかかりますか?
-
基本的に無料です。
地域居住支援事業
- 利用料は徴収されません
居住サポート住宅制度(居住支援法人)
- 入居支援、見守りサービスは基本的に無料
- 家賃、初期費用は別途必要
- シェルターにいなくても使えますか?
-
使えます。
地域居住支援事業の対象者は
- 一時生活支援事業の終了者(シェルター退所者)
- 現在の住居を失うおそれのある生活困窮者
- 地域社会から孤立した状態にある人
シェルターにいなくても、住居を失いそうな人も対象です。
- 1年後はどうなりますか?
-
状況によります。
① 自立できている場合:
- 支援終了
- でも、困ったときはまた相談できる
② まだ支援が必要な場合:
- 他の制度に繋ぐ
- 生活保護
- 継続的な福祉サービス
まとめ:シェルター退所後も、支援は続く
シェルターの期限が来ても、そこで支援が終わるわけではありません。
2019年から地域居住支援事業という制度が施行されていますが、実態がわかりにくいのが現状です。
実施自治体が限られているのか、情報公開が進んでいないのか、不明です。
ただ、シェルターの期限が来ても、諦めないでください。
退所後の支援を受ける方法があります。
- 地域居住支援事業
- 居住支援法人
- 住居確保給付金
- 生活保護
複数の制度を組み合わせて、安定した生活を目指せます。
一緒に、次の一歩を踏み出しましょう。




