居住支援法人では主に住まいについての支援を行いますが、入居だけでなく生活の支援も含めた包括的な動きが求められています。
今回は、経済的困窮に対して行われる「生活困窮者自立支援」について解説していきます。
生活困窮者自立支援制度とは
日本では、生活に困窮している人々を支援するためのさまざまな制度があります。
その一つが「生活困窮者自立支援制度」です。
平成27年4月から、生活困窮者の支援制度が始まりました。
自立相談支援事業、住居確保給付金が必須事業となり、任意事業(就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計改善支援事業、子どもの学習・生活支援事業)は各自治体により取り組みが異なります。
2015年4月施行では「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」が対象でした。
※ただし、生活保護受給者は除く
2018年の法改正では定義が拡大され「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」となりました。
さらに2024年4月には、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案の概要が提示されました。
さらなる居住支援の強化や、子どもの貧困への対応、支援関係機関との連携強化を促進する内容となっています。
生活困窮者だけでなく、生活保護受給者まで対象者が拡大されてる点にも注目です。
ここで1点注意したいのは、「生活困窮者」は「生活保護受給者」とは異なるということです。
生活保護に至る前の支援が「生活困窮者自立支援制度」なのです。
制度の目的
生活困窮者自立支援制度の目的は、生活困窮者が自力で生活できるようになることを最終目標としています。
生活に困窮する事態を未然に防ぐために、上記に上げたように生活全般にわたる援助を行いますが、単に「お金を稼ぐ」ことだけを意味するのではなく、自分自身の力で人間らしい生活を送ることができるようになることを目指します。
生活困窮者自立支援制度は、差別や偏見から生じる生活困窮者の社会的排除を防ぎ、社会全体で支える組織的な仕組みです。
社会的排除の要因となる差別や偏見を排除し、全ての人が社会参加できるようにするという社会政策の一環でもあります。
制度の対象となる人々
生活困窮者自立支援制度の対象となる人々は、様々な要因で生活困窮のため生活の維持ができなくなる可能性がある人を指します。
例えば、
- 所得が一定以下の人
- 雇用が不安定な人
- 住居を確保できない人
- 教育環境に恵まれない子どもたち
- 障害、一人親家庭などの理由で生計に困難を抱える人
などが対象となります。
制度の仕組み
生活困窮者自立支援制度の仕組みは、生活困窮者が自立して生活できるようになるまで、本人の状況に応じて複数の施策を総合的に提供するものです。
この実施主体は、福祉事務所設置自治体にあります。
ただし、それぞれの事業を直接または委託により実施します。
基本となるのは以下の3職種です。
※自治体の規模等によっては、相談支援員が就労支援員を兼務するなども可能
主任相談支援員 | 〇相談支援業務のマネジメント ・支援の内容及び進捗状況の確認、助言、指導 ・スーパービジョン( 職員の育成) 〇高度な相談支援( 支援困難事例への対応等) 〇地域への働きかけ ・社会資源の開拓・連携 ・地域住民への普及・啓発活動 |
相談支援員 | 〇相談支援全般 ・アセスメント、プランの作成、支援調整会議の開催等一連の相談支援プロセスの実施、記録の管理、訪問支援等( アウトリーチ) 〇個別的・継続的・包括的な支援の実施 〇社会資源その他の情報の活用と連携 |
就労支援員 | 〇就労意欲の喚起を含む福祉面での支援 〇担当者制によるハローワークへの同行訪問 〇キャリア・コンサルティング 〇履歴書の作成指導 〇面接対策 〇個別求人開拓 〇就労後のフォローアップ 等 |
※法においては、就労訓練事業の適切な実施を確保するために、都道府県知事による認定制度が設けられています。
自立相談支援事業は、大まかには3つの段階を踏んで支援を行っていきます。
生活困窮者の抱える課題を評価・分析し、ニーズを把握する
ニーズに応じた自立支援計画を設定し、継続的に行われるようにする
自立支援計画に基づき、各種支援が包括的に行われるよう関係機関との連絡調整等の業務を行う
具体的な支援内容
自立相談支援事業は、本人の状況に応じて包括的に行われます。
今回はその中でも主要な三つ、居住確保支援、就労支援、緊急的な支援について具体的に説明していきます。
居住確保支援について
私たちの生活では、何よりもまず、住まいの確保が重要です。
生活困窮者自立支援制度の要とも言える居住確保支援では「住宅確保給付金」の支給を行います。
主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合、もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合において、一定の要件を満たした場合、市区町村ごとに定める額(※)を上限に実際の家賃額を原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)支給します。(※)生活保護制度の住宅扶助額
支給額は下記を上限として、収入に応じて調整されます。
世帯人数1人 | 3.4万円 |
世帯人数2人 | 4.1万円 |
世帯人数3〜5人 | 4.4万円 |
支給期間は3ヶ月、支給された給付金は自治体から賃貸住宅の賃貸人や不動産媒介事業者などへ直接支払われます。
ただし、求職活動要件として、ハローワーク等に求職の申込みをしていることがあります。
また、誠実な就職活動が行われている場合は3ヶ月の延長及び再延長が可能となります。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
就労支援について
上記の居住確保支援で就労が必須なように、自立するためには就労の機会が必要となります。
生活困窮者は環境や生活の変化により、次のステップに向かう意欲や自尊感情を喪失している状況にあります。
まずはその回復を図り、状態に応じた就労支援を行っていきます。
状態 | 支援主体や事業 | 内容 |
自主的な求職活動により就労が見込まれる者 | ハローワークの一般職業紹介 | 一般的な職業相談・職業紹介 ※公共職業訓練、求職者支援制度も利用 |
就労に向けた準備が一定程度整っているが、個別の支援により就労が見込まれる者 | 生活保護受給者等就労自立促進事業 ※自立相談支援事業の就労支援員とハローワークの担当者によるチーム支援 | (ハローワーク) 担当者制による、キャリアコンサルティング、職業相談・職業紹介、公的職業訓練による能力開発、個別求人開拓、就労後のフォローアップ 等 (自立相談支援事業の就労支援員) 対象者の選定、ハローワークへの支援要請等 |
上記の者と比較すると就労に向けた準備が不足しているが、ある程度時間をかけて個別の支援を行うことで就労が見込まれる者 | 自立相談支援事業の就労支援員 | 福祉面での支援とともに、担当者制による、キャリアコンサルティング、履歴書の作成指導、ハローワークへの同行訪問、個別求人開拓、面接対策、就労後のフォローアップ 等 |
生活リズムが崩れている、社会との関わりに不安がある、就労意欲が低いなどの理由で、就労に向けた準備が整ってい ない者 | 就労準備支援事業 ※自立相談支援事業の就労支援員が、ボランティア、就労体験などの場を提供することもあり得る (就労準備支援事業に比べ簡素・軽微なものを想定) | 就労に向けた準備としての基礎能力の形成からの支援を、計画的かつ一貫して実施 |
就労への移行のため柔軟な働き方をする必要がある者 | 就労訓練事業 (中間的就労) | 支援付きの就労・訓練の場の提供 ※自立相談支援事業の就労支援員は、就労訓練事業者の開拓を実施。 |
緊急的な支援について
次に、緊急的な支援についてです。
住居喪失者に対して、緊急的に衣食住の確保が必要な場合に支援方針決定までの間支援を行います。
日常生活・健康面での支援 | ・ 緊急一時的な宿泊場所を提供し健康状態の悪化を防止 ・ 保健所等との連携の下で健康診断等を必要に応じて実施 |
就労に向けた支援 | ・就労に関する情報の提供 ・きめ細やかな就労自立に向けた支援を行う「ホームレス自立支援センター」の利用を促す |
その他 | 福祉サービスの提供が必要な利用者に対して、福祉事務所等における支援が受けられるよう助言・指導を行う |
利用料は無料で、原則3ヶ月利用できます。
生活困窮者自立支援制度の申請方法
申請の手続きは、地域の相談窓口にて行われます。
支援を受けるための条件
社会の中で、誰もが何らかの困難に直面することがあります。
そのような厳しい状況における救いとなるのが、さまざまな支援策です。
しかし、これらの支援を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。
それらは主に「年齢」「所得」「生活状況」の3つの要素から構成されています。
それぞれの条件について詳しく解説していきましょう。
年齢
支援対象となる年齢は、幅広い範囲があります。
しかし、それは支援内容や施策により異なります。
例えば、18歳未満が対象の「児童福祉法」や65歳以上の高齢者を対象とした介護保険法など、年齢を基準として具体的な支援策が設けられています。
年齢は支援の対象となる人物像を具体化する大切な要素なのです。
しかし、昨今では途切れない支援を行うために、年齢要件が撤廃されるケースも増えてきました。
令和5年4月1日に施行された「こども基本法」では18歳を超えても心と体の発達の過程にある人すべてが「こども」とされています。
また、生活困窮者自立支援法による住宅確保給付金においては、令和2年4月1日より年齢要件が撤廃され、65歳以上の方も対象となりました。
所得制限
支援を受けるためのもう一つの条件は、個人や世帯の所得です。
社会保障制度の中には、所得に応じて支援内容や金額が変わるものがあります。
これは、一定以上の所得がある人々には自己負担を求め、次に、一定以下の所得の人々に対しては補助を提供する、という公平性を保つための仕組みです。
例えば、生活保護や子ども手当、寡婦手当などは所得水準によって支給額が変動します。
また、税制面でも、所得税の控除や減税、還付などの制度が設けられています。
生活状態
最後に、生活状態も支援対象となる条件の一つです。
これは本人や家庭の生活習慣や状況、雇用形態、健康状態など、具体的なライフスタイル全般を指します。
例えば、シングルマザーや障害者、失業者、低所得者など特定の生活状態にある人々に対しては、その状況を改善し、生活水準を保つためのさまざまな支援が提供されます。
生活困窮者自立支援制度のまとめ
生活困窮者自立支援制度では、生活保護受給前の支援として幅広い対象者の支援を行うことができます。
対象者のみに限らず、地域と国や自治体が共同して地域の支援体制を創造していくことで、途切れない支援が可能となるのです。
茨城の生活困窮者自立支援
住むところの相談や生活の安定に向けた支援を行っています。
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soratobunezumi合同会社は、茨城県居住支援法人第8号です。