「生活が苦しい」「今の暮らしを続けていくのが難しい」
そんなときに頼れる制度のひとつが「生活困窮者自立支援制度」です。
この記事では、その制度の背景や内容、そして最近の法改正のポイントを、わかりやすく整理してお伝えします。
生活困窮者自立支援法とは?
「生活困窮者自立支援法」は、失業や病気、家庭の事情など、様々な理由で経済的または社会的に生活が困難な人々が、再び自分の力で生活を立て直せるようにサポートするための法律です。
これは2015年に施行された日本の法律です。
この法律は、高齢者や障害者といった分野ごとでは支援が届きにくい生活困窮者を対象にしています。
例えば、従来の制度では支援が届きづらかった、働くことに不安のある人や障害のある人、若者、ひとり親家庭なども対象に含まれます。
この生活困窮者自立支援法の制定により、国や自治体がさまざまな支援策を提供することで、自立した生活ができるようになるのです。

自立支援法の目的
生活困窮者自立支援法の主な目的は、生活困窮者が直面する様々な問題に対し、包括的かつ体系的な支援を提供することにより、自らの力で社会に再度参画し、自立した生活を送れるようにすることにあります。
この法律は、生活保護に至る前の段階で支援を行うことで、困窮状態の深刻化を防ぐ「予防」の役割を重視している点です。
困窮の早期発見とその予防、そして困窮状態にある人々の生活基盤の立て直しを支援することが、この法律の目標なのです。

自立支援制度の内容
生活困窮者自立支援法に基づく支援制度には、様々な事業が含まれます。
包括的な相談支援として、自立支援相談事業。

そして、一人ひとりの状況に応じた6つの支援があります。
居住確保支援 | 住宅確保給付金の支給 |
---|---|
就労支援 | 就労準備支援事業、認定就労訓練事業、生活保護受給者等就労自立促進事業 |
緊急的な支援 | 一時生活支援事業 |
家計再建支援 | 家計相談支援事業 |
子ども支援 | 子どもの学習支援事業 |
その他の支援 | ◇関係機関・他制度による支援、民生委員・自治会・ボランティアなどインフォーマルな支援 |
これらの支援事業を通じて、生活困窮者が抱える多岐にわたる課題に対応し、自立に向けて効果的な支援を受けられるようにしています。
支援は、全国の自治体に設置された自立相談支援窓口で受けることが可能です。
ここで相談員が話を聞き、一緒に課題を整理しながら、その人に合った支援プランを立てていきます。
具体的な支援事業には、国が必ず実施する「必須事業」と、自治体の判断で行う「任意事業」があります。
改正の背景
なぜ改正されたのか?
生活困窮者自立支援法は、生活困窮者の支援を目的として2015年に施行されました。

法律施行から約10年が経ち、社会情勢も大きく変化しました。
- 高齢化の進行
- 子育て世帯の困窮の増加
- コロナ禍による収入減・孤立
これらの変化によって、新たなニーズが生まれると同時に、法律の課題点が明らかになりました。
このような背景から、より効果的に生活困窮者を支援するため、そして社会情勢の変化に柔軟に対応できるようにするために、法律の改正が提案されたのです。
生活困窮者とは
生活困窮者とは、経済的または社会的な理由で最低限度の生活を維持することが困難な人々を指します。
これには、失業や低収入、病気や障害、家庭環境の変化など、さまざまな要因が影響しています。
日本における生活困窮者自立支援法のもとでの支援事業は、必須事業とされている「自立相談支援事業の実施」と「住宅確保給付金の支給」です。
また、任意事業となっている「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」及び「家計相談支援事業」さらには、「子どもの学習生活支援」など幅広く、各個人の状況に応じた支援が提供されています。

生活困窮者自立支援法の改正は、これらの支援体制をさらに充実させ、社会の多様な変化に対応することを目指しています。
改正の主な内容

改正のポイント①対象者の拡大
生活困窮者自立支援法の改正では、特に対象者の範囲が拡大されています。
これまでの支援対象に加えて、高齢者や子育て世帯へのフォーカスが一層強くなります。
これにより、これまで以上に多様な生活困窮者が自立支援サービスを受けやすくなることが期待されています。
また、取り組み内容についても、就労準備支援や居住支援の強化、地域コミュニティとの連携強化など、より実態に合わせた支援が計画されています。
これらの変更点は、生活困窮者一人ひとりの状況に合わせたきめ細かな支援を可能にすることが目的です。
改正のポイント② 居住支援の強化
改正の具体的な内容としては、居住支援の強化が挙げられます。
「一時生活支援事業」が改称され居住支援事業となり、シェルターや緊急支援を365日受け入れ可能な努力義務化となりました。

入居時から入居中、退去時までの一貫した居住支援。
見守りなどの支援を自治体の努力義務にするなど、地域居住支援事業を具体化する動きが出ています。

生活困窮者住居確保給付金の支給対象者の範囲拡大、無料低額宿泊所の質の向上なども含まれています。
転居にかかる初期費用の補助(引っ越し代・礼金等)を追加支給対象に含むように拡充、低廉家賃住宅への入居も支援対象となりました。

改正のポイント③ 子どもへの支援の拡充
次に、子どもの貧困への対応措置があります。
生活保護世帯の子ども及び保護者に対し、学習・生活環境の改善や奨学金の活用に関する情報提供、助言を行うための事業を法定化し、支援の仕組みを整備します。
また、生活保護世帯の子どもが高等学校を卒業する際に、一時金を支給するなどして生活基盤の確保を図ります。
厚生労働省は貧困対策の一環として、生活保護を受けている世帯の子どもが高校卒業後に就職する際、一時金を支給することを盛り込んだ生活保護法などの改正案を今の通常国会に提出する方針です。
引用元:「厚労省 生活保護受給世帯の子が高卒就職時に一時金支給へ」
その他、生活困窮者への家計改善支援事業についての国庫補助率の引き上げ、就労準備・家計改善支援の実施強化に向けた生活保護受給者向け事業の法定化。
改正のポイント④ 支援制度のシームレス化
「自立相談支援」「就労準備」「家計改善」「居住支援」を連携させたワンストップ体制へ強化されます。
自治体による支援会議の設置や支援関係機関との情報連携が義務化され、包括的な支援体制が整います。
また、就労準備・家計改善・居住支援などを生活困窮者だけでなく生活保護受給者も「就労準備」「家計改善」「居住支援」などの支援を一体的に受けられる仕組みとなる見込みです。
生活保護受給者まで対象者を拡大したことで支援対象の垣根をなくし、シームレスな支援を目指します。
より具体的かつ包括的な支援が提供されるようになることが期待されます。
まとめ
制度の改正により、「どこに相談すればいいのか分からない」「支援が複雑で手続きが難しい」といった声にも、よりきめ細かく応えられるようになります。
経済的・社会的に困難な状況にある人が、自分らしい暮らしを取り戻すための一歩として、ぜひ知っておいてほしい制度です。

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