生活困窮者を支える自立相談支援

目次

自立相談支援事業とは

自立相談支援事業は、生活困窮者やその関係者からの相談に応じて個別の状況に合わせた支援プランを作成し、必要なサービスにつなげることを目的としています。

自治体が直営する場合もあれば、委託先が実施する場合もあり、全国の自治体に設けられた自立相談支援窓口を通じて行われています。
生活に困窮する人々が経済的、社会的な自立を目指すことを支援するため、さまざまなサービスの提供や情報提供を行います。

生活困窮者自立支援制度の概要

生活困窮者自立支援制度は、経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することが困難になりうる人々に対して、個々の状況に応じた支援を行い、自立を促進することを目指しています。

経済的な困窮、就労の状況、心身の健康状態、住まいの確保など、さまざまな理由で生活に困窮している人々が対象となります。

ただし、生活保護に至る前の段階の自立支援策を強化するものなので、生活保護受給者は対象外となります。

この制度に基づき、住居確保給付金の支給、学習支援、家計再建支援、就労準備支援などの支援事業が行われています。

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国が定める事業のうち、必須事業となるのが「自立相談支援事業」「住居確保給付金の支給」です。

自立相談支援事業の役割

自立相談支援事業の主な役割は、困窮する人々が直面する多様な問題に対応し、社会的、経済的に自立するための支援を提供することにあります。

個々の状況に合わせたプランを作成し、関係機関への同行訪問や就労支援、認定就労訓練事業の利用あっせんなど、具体的な支援を行います。

これにより、生活困窮者が抱える課題の早期発見と解決を図り、さらなる困窮を防ぎながら自立へと導きます。

自立相談支援事業の具体的取り組み

自立相談支援事業では、生活に困っている人々への具体的な支援方法として、個々の状況に合わせたプラン作成が中心となります。

引用元: 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度について 」

支援員によるプラン作成

支援員は、相談者と一緒に現在の状況を把握し、これからどういった道を歩むべきか計画を立てます。

STEP
アセスメント

支援員が相談者の生活状況をヒアリングし、抱えている課題を把握します。

STEP
プラン策定

支援員と相談者が協同し、生活困窮状態からの脱却へ向けた支援計画を立てます。

STEP
実行

支援計画に基づき、就労支援など様々な支援施策と連携し、困窮生活からの脱却に向けて継続的支援を行います。

その計画には就労準備から子どもの学習支援、住まいの確保まで、複数の事業が含まれます。

就労準備支援事業

 「社会との関わりに不安がある」「他人とのコミュニケーションがうまくとれない」などの理由で、直ちに就労が困難な方に対して、一般就労に向けた基礎能力の習得や就労体験などの支援を行います。

就労準備支援事業は、職を得るということだけでなく、地域とのつながりを作り継続的な社会参加を支援する居場所としての側面もあります。

現在その中核を担っているのはハローワークですが、一般就労が難しい人に対してはなかなか職に繋がらないという課題もありました。

そのため、生活困窮者自立支援制度では、自治体が生活や福祉の面からの支援も行いながら就労支援を行う体制を構築しています。

就労準備支援事業の実施状況・委託先一覧(令和5年6月時点)

住居確保給付金

住居確保給付金は、住まいの確保に困っている人への経済的援助を提供します。

具体的には、離職や廃業によって収入が減少し、住居を喪失したり喪失するおそれのある方に対して、一定期間、家賃相当額を支給します。

ただし、就職に向けた活動をすることなどを条件としています。

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一時生活支援事業

住居のないもしくは失う恐れのある生活困窮者などに対して、一定期間に限り、宿泊場所や食事などを提供します。
また、自立支援センター等を退所した者、居住に困難を抱える者であって地域社会から孤立した状態にある者等に対しても、日常生活を営むのに必要となる支援等を行います。

これにより、生活の基盤を安定させながら、就労支援も行い長期的な自立を目指していきます。

支援の実施期間は原則3ヶ月

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家計改善支援事業

家計改善支援事業では、家計の見える化を図り、本人が家計の現状を理解して生活を見直すことで将来的に家計を安定させるための知識とスキルの向上を目指します。

また、貸付の斡旋なども行います。

子供の学習・生活支援事業

子供がいる家庭に対しては、「貧困の連鎖」を防止するため、学習支援や生活習慣の改善、教育及び就労に関する支援などを行っていきます。

子供たちの将来への可能性を広げ、子どもが安心して暮らせる生活環境の確立も大切なポイントです。


以上の取り組みを通して、自立相談支援事業は、個々の生活困窮者が抱える様々な課題に対応し、自立への道を一歩ずつ進むための支援を行っています。

自立相談支援事業に求められる人員配置と人材育成

適切な人員配置とその理由

自立相談支援事業において、適切な人員配置は極めて重要です。

生活困窮者一人ひとりの状況は多岐にわたり、それぞれに最適なサポートプランを提供するには、専門性と実務経験を兼ね備えた支援員が必要不可欠となります。

支援員は、3職種を配置することを基本としています。

主任相談支援員

相談支援業務のマネジメントや地域の社会資源の開発等を行う

相談支援員

相談支援全般を行う

就労支援員

就労支援に関するノウハウを有する

ただし、必ずしも新たな機関を設置する必要はなく、既存の相談支援機関に生活困窮者支援の機能を上乗せして実施することも可能です。

支援員の養成とその重要性

自立相談支援事業の質を維持・向上させるためには、支援員の質の担保も非常に重要です。

具体的には、支援員の専門性強化と人材育成が欠かせません。
実務に即した研修を定期的に実施することで、支援員の知識更新とスキルアップを図り、各種相談に対する対応力を高めることが求められます。

さらに、専門性の高い研修を受けることで、支援員自身のモチベーションの向上にもつながり、より質の高い支援が提供できるようになります。

生活困窮者の多様なニーズに応え、社会復帰をサポートするためには、支援員の継続的な教育と成長が不可欠であり、そのための組織的なサポート体制の整備が求められます。

自立相談支援機関の役割と役立て方

自立相談支援事業は、生活困窮者及び生活困窮者の家族やその他の関係者からの相談に応じ、適切にアセスメントを実施して一人ひとりの状態にあったプランを作成します。

対個人には必要な支援の提供を、対地域には関係機関とのネットワークづくりと地域に不足する社会資源の開発等に取り組みます。

自立相談支援機関の設置場所

自立相談支援機関は全国の自治体に設置されており、生活困窮者やその関係者が直面する様々な問題に対応するための窓口として機能しています。

これらの機関は、市区町村の役所や社会福祉協議会内に設けられることが多く、容易にアクセスすることができます。
また、委託を受けた民間の支援団体が運営している場合もあります。

自立相談支援機関 相談窓口一覧

自立相談支援機関によるサポート内容

自立相談支援機関では、経済的、精神的、身体的な理由で生活に困窮している人たちに向けた多角的な支援を提供しています。

相談支援業務(対個人)

支援員は本人の思いや気持ちに寄り添いながら、本人が主体的に次りうtに向けた行動を取れるように包括的に対応していきます。

地域づくり関連業務(地域への働きかけ)

生活困窮者が地域の中で支え合いながら生活できる「場づくり」や、地域への働きかけを行います。

相談支援プロセスの概要

自立相談支援事業では、基本的には13のステップを踏まえた支援を実施します。

STEP
把握・アウトリーチ

ライフライン事業者と連携を図るなど多様な方法で早期把握に努める。
また、支援を必要とする人についての支援会議を行い、情報を共有する。

STEP
包括的相談

相談受付時に、、支援員は自立相談支援機関による支援を継続するか、他制度の相談窓口等へつなげるべきかを判断し、振り分ける。

STEP
利用申込

「自立相談支援機関使用標準様式」の「相談受付・申込票」により、本人から自立相談支援事業の利用申込を受け付ける。

STEP
緊急的な支援・法に基づく事業等の利用手続

法に基づく「住居確保給付金」と「一時生活支援事業」の提供、生活保護の適用が必要な場合は迅速な手続きを取り、社会福祉協議会が実施している生活福祉資金貸付事業や、過重・多重債務がある場合には債務整理につなげる。

STEP
アセスメント

生活困窮に陥っている状況を包括的に把握し、それらの背景・要因等を分析し、解決の方向を見定める。

STEP
プラン(案)策定

本人と相談支援員の協働によりプランを作成し、自立相談支援機関が主催し関係者が参加する支援調整会議において内容などを検討する。

STEP
支援調整会議

①本人の状況や設定した目標に対して適切であるか②課題解決に向けた内容となっているか③プランが本人の意欲やモチベ―ションの喚起に繋がっているかを共有する。

STEP
支援決定

検討したプラン案にそって、法に基づく事業等の実施を自治体が決定する。

STEP
支援の提供

プランや支援決定に基づき、本人に必要な支援を提供する。

STEP
モニタリング

支援が適切に提供されているかを把握する。

STEP
プラン評価

設定した目標の達成度や支援の実施状況、支援の成果等をみて、支援を集結させるか再プランを策定するかを判断する。

STEP
再プラン策定

期間が経過し、改めて包括的なアセスメントを行う場合や状況が大きく変化した事によるプラン修正が足りない場合に再プランを作成する。

STEP
終結

①生活困窮の状態が改善し、設定した目標を達成する目途が立った場合②生活困窮の状態から脱却できていないものの、大きな課題がある程度解決されて自立相談支援機関による支援は一旦終了してよい場合③本人からの連絡が完全に途絶えた場合などに判断する。

まとめ

本記事では、生活困窮者を支えるための自立相談支援事業について詳しく見てきました。

生活困窮者自立相談支援事業は、ただ支援を行うだけでなく、受ける人々の尊厳を守りながら社会の一員として自立した生活を送ることができるよう、全力を尽くしています。

もし、生活に困っている人々がいれば、躊躇せずに、地域の自立相談支援機関にご相談下さい。

茨城の生活困窮者自立支援 リーブバンク

リーブバンクは最低限生活に必要な衣類、住まい、外部との連携や公的機関による支援を受けるためのつなぎ役を担います。
必要なヒト・モノ・コトがあれば、人生のバックヤード(リーブバンク)にご相談下さい。

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この記事を書いた人

【茨城県居住支援法人第8号】茨城県内全域において、低額所得者/被災者/障害者/子育てをする者/DV被害者/生活困窮者の方を対象に住まいや生活に関する相談窓口、住まいの情報提供及び公的機関への手続き援助など、物件探しや賃貸借契約の手続き支援、住宅への内覧調整、同行・立ち会い、短期、緊急性のある方への宿泊場所その他日常生活に必要な物資の貸与・提供、日常生活の見守りを行います。

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