居住支援法人とは?概要とその役割について

運営元のsoratobunezumi合同会社では居住支援法人を行っています。
この居住支援という言葉、初めて聞くという方も多いでしょう。

一体どんなことをしているの?どんな事業内容なの?と聞かれるので、今回はこの「居住支援法人」について書いていこうと思います。

目次

居住支援法人制度について

居住支援法人制度とは、低所得者や被災者、高齢者、障がい者、子育て世帯など、住宅の確保に特に配慮を要する方々民間賃貸住宅に円滑に入居できるよう支援するための制度です。

住宅確保要配慮者居住支援法人の概要
 住宅確保要配慮者居住支援法人とは、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を養育する者、その他住宅の確保に特に配慮を要する者)の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るため、住宅確保要配慮者に対し家賃債務保証の提供、賃貸住宅への入居に係る住宅情報の提供・相談、見守りなどの生活支援等を実施する法人として都道府県が指定するものです。
(住宅セーフティネット法第40条)。

引用元:国土交通省「住宅確保要配慮者支援法人について)

住宅セーフティネット法との関連

居住支援法人制度は、住宅セーフティネット法に基づいて設けられています。
住宅セーフティーネット法は正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」と言います。

第一条 この法律は、住生活基本法(平成十八年法律第六十一号)の基本理念にのっとり、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関し、国土交通大臣による基本方針の策定、都道府県及び市町村による賃貸住宅供給促進計画の作成、住宅確保要配慮者の円滑な入居を促進するための賃貸住宅の登録制度等について定めることにより、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用元:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律

住宅の確保の配慮が必要な方が増加する見込みがある中で、根幹となる公営住宅が大幅な増加が困難となっている一方、民間の空き家・空き室が増加していることから、それらを活用した改正住宅セーフティネット制度が平成29年(2017年)10月からスタートしました。

空き家の増加については、2013年の総務省調査によると全国の空き家の数は約820万戸、2033年頃には2150万になるだろうと予想されています。

売買されず、なおかつ定期的な利用がされない空き家は、高齢化により今後急激に増えていく見込みです。
そういった空き家も活用しながら、住宅確保要配慮者に対する住宅のセーフティーネット機能を強化していくことがこの法律の目的です。

あわせて読みたい
知っておきたい住宅セーフティネット法 住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者に対して賃貸住宅の供給を促進するための法律です。 正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といいます。

居住支援対象者の項目について

居住支援法人の対象者は、住宅確保要配慮者です。
住宅確保要配慮者は、大まかに3つの位置づけにより構成されます。

法第2条による5つの属性として位置づけられている者は以下のとおりです。

法令により位置づけられる者

被災者(発災から3年以内)
高齢者
障害者
子ども(高校生相当以下)を養育している者

また、省令(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則)で要配慮者とされているのは以下のとおりです。

省令により位置づけられる者

外国人
中国残留邦人等
児童虐待を受けた者
ハンセン病療養所入所者等
DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者
拉致被害者
犯罪被害者
生活困窮者及び矯正保護退所者

それに加え、各自治体の供給促進計画で位置づけられる者については以下のとおりです。

供給促進計画で位置づけられる者

例)海外からの引揚者、新婚世帯、原子爆弾被爆者、戦傷病者、児童養護施設退所者、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・ トランスジェンダー)、UIJターンによる転入者、これらの者に 対して必要な生活支援等を行う者 等

住宅確保要配慮者は民間の賃貸住宅の確保が難しく配慮を要するため、居住支援法人は公的機関や他法人と連携し支援事業を行っていきます

福祉から見た住宅確保要配慮者

住宅確保要配慮者は福祉の面からみると分野ごとに対象者が異なります

例えば、65歳以上の高齢者は介護保険法、生活困窮者は生活困窮者自立支援法といったように、該当する福祉の分野が違うために制度から漏れてしまうといったことも起こり得ます。

あわせて読みたい
生活困窮者自立支援制度を解説 居住支援法人では主に住まいについての支援を行いますが、入居だけでなく生活の支援も含めた包括的な動きが求められています。 今回は、経済的困窮に対して行われる「生...

居住支援法人は「住まい」を起点にして生活支援体制を構築し、住宅と福祉の連携を促進、「ゆりかごから墓場まで」の生涯に渡り途切れない支援が求められています。

居住支援法人の定義とその役割

居住支援法人は、住宅確保要配慮者に対して様々な支援を行っていきます。

居住支援法人の業務

①登録住宅の入居者への家賃債務保証
②住宅相談など賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談
③見守りなど要配慮者への生活支援
④①から③に付帯する業務
※必ずしも①から④のすべての業務を行わなければならないものではありません

具体的には、民間の賃貸住宅の確保日常生活の安定・安心のための入居中支援、社会関係構築のための孤立孤独の解消に向けた見守りや相談
入居や就労のサポートなどを行うこともあります。

住宅確保要配慮者に至る経歴は様々ですが、それぞれの人々が抱える問題や困難を共有し、必要な機関を繋いでいく。
単なる「入居支援」だけでなく、入居後に必要な「生活支援」も含めた総合的な生活支援が求められています。

社会的に弱い立場の人々が困難な状況から脱出し、自立を目指すきっかけを作るためには、要配慮者のマッチング・民間の賃貸住宅等への入居支援だけでなく、一時生活支援事業も連動した包括的な動きが必要なのです。

2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」による一時生活支援事業は、経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある方に対して、個々の状況に応じた支援を行い、自立の促進を図ることを目的としています。※生活保護受給者は除く 

あわせて読みたい
一時生活支援事業での衣食住支援の取り組み 一時生活支援事業とは、生活困窮者のうち住居に不安を抱えている層、一時的に住む場所を失った人々に対して、一定期間の宿泊場所や食事を提供し、生活基盤の整備や自立支援を行う制度です。

どんな状況にあっても、安心して生活できる相談場所があること。
そんな途切れのない支援をしていく土台となるのが「住まい」です。

不安定な住環境が身体に高いストレスを引き起こすという研究結果も報告されていますので、住まいの安定は心のケアだけでなく社会復帰にも大きく寄与すると言えるでしょう。

14日(現地時間)、英BBC、米ニューヨークポストなど海外メディアの報道によると、オーストラリアのエセックス大学とアデレード大学の研究チームは、住居環境が肥満や喫煙、失業よりも生物学的老化をより早く促進することができると明らかにした。今回の研究結果は「疫学および地域社会健康ジャーナル」に発表された。

引用元:喫煙・肥満より「これ」のせいで人は早く老化する

居住支援法人の指定について

居住支援法人の属性

居住支援法人の形態はNPO法人、一般社団法人、一般財団法人(公益社団法人・財団法人を含む)、社会福祉法人、その他居住支援を目的とする法人が県の指定を受けます。

大まかに2つの系統があり、不動産系(住宅)と福祉系に分けられます。

この法人は、各県ごとに指定を受けます
指定を希望する法人は、まず都道府県に対して申請手続きを行う必要があります。

居住支援法人は全国で687(2023年4月時点)、茨城県指定居住支援法人は10法人(2024年3月現在)となっています。

茨城県指定 居住支援法人一覧

指定された法人の情報や運営状況、事業内容なども都道府県ごとに異なる場合があります。

指定を希望する法人の申請手続き

指定を希望する法人は、指定申請書や誓約書、支援業務実施計画書、活動実績記録などの様々な書類を提出します。

これらの書類には、法人の設立目的や運営方針、居住支援に対する具体的な取り組みなどが記載されています。

また、法人の申請者は、居住支援に関する豊富な経験や専門的な知識、信頼性なども考慮されるため、指定を受けようとする場合には居住支援法人の事業内容に沿った活動を継続して行っている必要があります

指定の審査基準とその内容

指定申請書や関連する書類の提出後、管轄の都道府県が書類を審査します。

指定の審査基準は、それぞれの都道府県によって異なる場合があるため、申請前に都道府県のウェブサイトなどで確認しましょう。

審査では、法人の目的や運営方針の妥当性や支援業務の具体的な内容、経営状況などが評価されます。
また、法人の財政的な安定性や事業遂行能力、法令遵守の履行状況なども審査の対象となります。

居住支援法人が果たす社会的役割

居住支援法人の事業は、社会の健全な発展を促進する非常に重要な役割を果たします。

それは、一人ひとりが自立した生活を営むためのサポートをするというものです。
高齢者、障害者、生活保護受給者など、社会の中で生活する際に何らかの困難を抱える人々への援助は、これらの人々が自分自身の力を発揮し、社会に貢献できるようにするための重要なステップとなります。

家賃債務保証の提供

居住支援法人は、住宅確保要配慮者が賃貸住宅に入居する際の家賃の債務保証を提供します。

家賃債務保証とは、入居希望者が賃貸住宅の契約を締結する場合に、保証会社※が借主の連帯保証人に近い役割を果たす制度です。借主が賃貸借契約の期間中に家賃等を滞納した場合に、保証会社が一定範囲内で立て替えます。※保証会社や信販会社等を指します。

引用元:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会家賃債務保証事業者協議会

一般的な賃貸住宅を契約する場合、連帯保証人または緊急連絡先の提示が求められますが、住宅確保要配慮者は申し込み時点で「身寄りがない・就労先がない・収入がない」などのリスクがあり、物件の借り入れができないといったケースが多いです。

家賃債務保証制度は、家賃の滞納や契約違反などのトラブルが発生した場合には連帯保証人の役割を担うことにより、入居を支援します。

あわせて読みたい
家賃債務保証の仕組みを解説! 家賃債務保証は、賃貸住宅に入居する際に家賃の滞納リスクをカバーし、入居者と家主双方に安心をもたらす仕組みです。 この記事では、家賃債務保証の基本的な仕組みからメリット、デメリット、利用手続きの方法まで、幅広く解説します。

賃貸住宅への入居に係る住宅情報の提供

居住支援法人は、賃貸住宅の情報提供や相談窓口としての役割も担っています。
住宅確保要配慮者が入居可能な住宅の情報などを提供し、適切な住宅を見つける手助けをします。

また、内覧の同行や入居の手続き、契約書の作成など入居に関するサポートも行います。

例えば、住宅確保要配慮者は携帯電話サービス等を利用していないことも多いです。
経済的な理由や過去に滞納があったりすると、新規で携帯の申し込みができなくなり、住まいだけでなく連絡先もない状態に陥ります。

そうすると、賃貸物件の契約ができなくなり審査に落ちる・停止するといった事が起こり自立に支障をきたしてしまいます。

あわせて読みたい
未来へのリスタート!携帯支援で支える生活困窮者支援 生活困窮者への携帯電話の支援は、その人々が社会とつながり続け、自立に向けて歩み出すために非常に重要です。

現代社会では情報がインターネットを介さないと手に入らないことがあるので、必要な情報にたどり着けるように情報の提供も行います。

スムーズな入居の促進活動

居住支援法人は、住宅確保要配慮者の円滑な入居を促進するために、各種の活動を行っています。

例えば、地域の賃貸住宅オーナーや不動産会社との連携を図り、住宅の提供や入居条件の改善などを取り組んでいます。
また、入居後の住宅の見守りやライフサポートも行い、入居者の生活をサポートします。

これらの居住支援に関わる部分は、一時生活支援事業のうち「地域居住支援事業」にも含まれているため、環境整備として連携体制を取ることもあります。

あわせて読みたい
地域居住支援事業と住宅確保の取り組み 域居住支援事業は、住宅に困窮し、日常の自立生活に不安がある低所得高齢者などが、住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう支援を行う重要な取り組みです。この事業により、住宅の確保と共に、必要な見守りや生活支援が一体的に提供されます

高齢者支援との関係

急速な高齢化社会の進行とともに、高齢者の自立を支える居住支援法人の役割はますます重要性を増してきました。

民間の賃貸住宅を借りようとした場合に高齢者はリスクが高く敬遠されがちなため、住まいが不安定になりやすい傾向にあります。

  • 火の不始末による火災のリスク
  • 孤独死のリスク
  • 家賃等を支払い続けられないリスク

といった点で貸主に入居を拒まれてしまったり、立地のアクセスやバリアフリー対応の物件が少ないといったマッチングできる物件の少なさも原因の一つです。

孤独死や相続や後見人の問題など、高齢者の受け入れに伴うサポートの範囲は、生活技能の維持から精神的な支えまで多岐にわたります。

福祉サービスとも連携しながら適切なサポートを行い、社会の一員として生きていく意欲を維持することが求められています。

障害者支援との関係

障害を持つ人々への支援は、居住支援法人が果たすもう一つの重要な役割です。

身体に障害のある方や知的障害のある方、精神疾患や難病等により日常生活に制限のある方、精神障害(発達障害)のある方が対象となります。

  • 精神科の受診が必要であるにも関わらず、初診までに1ヶ月以上の時間を有すケース
  • 精神科の長期入院がなくなったことで本人が拒んでも3ヶ月で退院するケース
  • 依存症の治療が適切に行われず、健康状態の低下が起こるケース
  • 金銭管理が難しく散財してしまうケース

など、多くの場合、様々な支援が必要となるため民間の賃貸住宅への入居を拒まれてしまうケースが多いのです。

居住支援法人は、その人特有の能力や弱点を理解し、個々のニーズに合わせた支援を提供することで、自立した生活を目指します。

社会と適応し、自立した生活を営むことは、社会全体への貢献の一環であり、またその人自身の生活の質を向上させることにもつながります。
居住支援法人が提供する支援は、その実現に欠かせない役割を果たしています。

生活保護受給者支援との関係

生活に困窮する居住者への援助は、居住支援法人の事業の大部分を形成しています。

生活保護の申請には、その世帯が居住する住まいが必要ですが、そもそも住所がないという状態での相談が非常に多いのが現状です。

生活保護受給前の民間の賃貸住宅の借り入れは非常に困難です。

  • ブラックリストに載っている
  • 収入がなく車上生活をしている
  • 身寄りがなく保証人がたてられない

といったことが重な要因です。

生活保護を受ける人々が自分自身の生活を支え、自社の力を信じることができるようにするために、居住支援法人は、対象者の個々のニーズを理解し、それぞれに合わせた支援や教育を提供します。

あわせて読みたい
生活保護の基本から申請方法まで 日本全国あらゆる年齢や性別の人々に対して確実な生活保障を提供するための制度が生活保護です。具体的には、生活に必要な最低限の生活資金や生活上の各種の援助を提供し、生活困窮者を対象に積極的に社会復帰を支援します。これは、ある日突然厳しい生活困窮や生活危機に直面する可能性が誰にでもあるからです。

これにより、自立に向けて自分自身の力で生活しながら、周囲の社会との関連性や連帯性を再構築していきます。

居住支援法人のまとめ

以上、居住支援法人についての概要と役割についてお伝えいたしました。

それぞれの視点から経済的困窮を解決し、人とのつながりを確保し伴走的支援を行う居住支援

地域に生まれる隙間をどう埋めていくのか。

これは、居住支援法人だけでは解決できません。
人を中心に点を結び、それぞれの分野が線でつながることで安心して暮らせる社会が実現できるのです。

茨城の生活困窮者自立支援

住むところの相談や生活の安定に向けた支援を行っています。
必要なヒト・モノ・コトがあれば、人生のバックヤードにご相談下さい。

soratobunezumi合同会社は、茨城県居住支援法人第8号です。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次